渇水か、それとも氾濫か――2026年、丹沢の奥深くに眠る「首都圏の生命線」が直面する限界と再生
渇水か、それとも氾濫か――2026年、丹沢の奥深くに眠る「首都圏の生命線」が直面する限界と再生の要点を詳しく解説してご紹介します。
湖の水を守る戦いは、コンクリートの堤体だけで完結するわけではない。その背後に広がる広大な丹沢の山々、すなわち「緑のダム」と呼ばれる水源かん養林の健全性が今、かつてない試練に晒されている。
ブナやモミの原生林が雨水をゆっくりと地中に蓄え、清冽な伏流水としてダム湖へ送り届ける――。そんな理想的な循環林の足元で、土壌の浸食が静かに進む。ニホンジカによる下層植生の食害に加え、短時間で叩きつけるような豪雨が表土を削り取り、ダム湖へ流れ込む濁水の日数を長期化させているのだ。
「一度土砂や微粒子が水中に舞い上がると、沈殿するまでに数週間かかることも珍しくありません」。浄水処理場への負荷を減らすため、湖面には濁水取水設備がフル稼働している。森林の保全ボランティアや林業関係者による植樹・間伐作業が急ピッチで進められているが、自然の回復スピードを上回る気象の猛威が、水源地の森を削り続けている。