人類唯一の根絶感染症「天然痘」の真実|致死率・歴史から最新リスクまで

人類唯一の根絶感染症「天然痘」の真実|致死率・歴史から最新リスクまでにまつわる最新トピックを分かりやすく発信ます。

人類の歴史上、私たちが完全に撲滅できた感染症は、人獣共通感染症を含めても「天然痘」と家畜の「牛疫」の2つのみです。ポリオや麻疹など、高度な医療技術がある現代でも根絶が難航する感染症が多いなか、なぜ1980年という早い段階で天然痘を根絶できたのでしょうか。そこには生物学的・疫学的な3つの決定的な理由があります。

① 自然界における宿主が「ヒト」しか存在しなかった

天然痘ウイルスはヒトにしか感染・増殖できない偏性病原体です。インフルエンザ(鳥・豚)や狂犬病(イヌ・野生動物)、ペスト(げっ歯類)、新型コロナウイルスのように、自然界の野生動物の中にリザーバー(病原体の潜伏場所)を持ちません。そのため、人間社会の中でウイルスの感染連鎖を断ち切れば、再侵入するルートが存在しなかったのです。

② 不顕性感染(無症状の保菌者)がほぼ存在しなかった

天然痘に感染した場合、ほぼすべての患者に高熱と一目でわかる特徴的な発疹が現れます。潜伏期間中の感染力は極めて弱く、無症状のまま他人にうつす「隠れた感染源(スプレッダー)」がほとんどいませんでした。これにより、感染者の発見と隔離が極めて容易でした。

③ 極めて有効なワクチンと「包囲接種戦略」の勝利

種痘ワクチンは1回の接種で数年から10年以上の強固な免疫を獲得でき、熱帯地域でも常温保存可能な凍結乾燥ワクチンや、誰でも簡単に接種できる「二股針(Bifurcated needle)」が開発されました。さらにWHOは、全員に闇雲に打つのではなく、患者が発生した地域の濃厚接触者を同心円状に割り出して集中的に接種する「包囲接種(リング・バクシネーション)」を徹底。1977年、ソマリアの青年アリ・マオ・マーラン氏を最後の自然感染者として、1980年5月8日にWHOが地球上からの根絶を公式に宣言しました。

吉田 誠

吉田 誠

インテリア&ライフスタイルコーディネーター

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest