まど・みちおの生涯と名作の深層|ぞうさんに宿る104年の祈り
まど・みちおの生涯と名作の深層|ぞうさんに宿る104年の祈りにまつわる興味深い視点を詳しく紐解きます。
詩人まど・みちおの歩みは、決して順風満帆な文学エリートの道ではありませんでした。本名・石田道雄として1909(明治42)年、山口県都濃郡徳山町(現・周南市)に誕生。父親が単身赴任していた台湾へ家族が移住するなか、幼少期は祖父と日本に残り、家族と離れて暮らす孤独な少年時代を過ごしました。この時期に培われた「ひとりで世界を凝視する視線」が、後年の詩作の揺るぎない土台となっています。
1925年に台北へ渡り、台北工業学校(現・台北科技大学)土木科を卒業後は、台湾総督府道路港湾課の技手として勤務。測量や土木設計という工学的な実務に従事しながら、言葉への情熱を燃やし続けました。転機が訪れたのは1934年、雑誌『コドモノクニ』の選者であった北原白秋に投稿詩が特選として認められたことです。白秋からの「卓越した言語感覚」との激賞が、彼を本格的な創作の道へと決定づけました。
戦局が悪化すると1943年に召集を受け、船舶工兵として南方戦線へ派遣。終戦後の混乱期を経て、1948年に日本へ引き揚げた後は、婦人画報社などで編集業務に携わりながら児童文学誌に精力的な執筆を続けました。自らの戦争加担への深い悔悟と、戦後の荒廃した社会において「無条件に生きていることの尊さ」を子どもたちへ届けたいという決意が、ペンネームまど・みちおとしての数々の名作誕生へと結びつきます。