覚醒剤「炙り」の真相と注射との違い|潜む依存の罠と捜査の実態
覚醒剤「炙り」の真相と注射との違い|潜む依存の罠と捜査の実態に関する専門家の意見を詳しく解説いたします。
「炙りならやめられる」という甘言に乗せられた代償は、想像を絶する心身の荒廃となって跳ね返ってきます。薬理学的に覚醒剤は、脳内のシナプス間隙にドーパミンやノルアドレナリンを過剰に放出させ、再取り込みを強力に阻害することで中枢神経を異常興奮させます。自然界ではあり得ないレベルの快楽物質に晒された脳は、自律的な防衛反応としてドーパミン受容体を減少(ダウンレギュレーション)させます。これが「耐性」と「依存」の決定的なメカニズムです。
薬効が切れた瞬間に訪れるのが、反跳性の激しい精神的・身体的苦痛、すなわち離脱症状(禁断症状)です。回復支援施設「DARC(ダルク)」の入所者手記や、法廷で語られた元受刑者たちの生々しい証言からは、その地獄のような苦悶が克明に浮かび上がります。
「薬が切れると、全身の骨が軋むような激痛と、底なしの倦怠感に襲われる。身体が重力に引きずり込まれるようで起き上がることすらできない。やがて『誰かが自分を監視している』『部屋の外で警察が包囲している』という強烈な被害妄想に支配され、エアコンのファンの音すら自分を罵倒する声に聞こえる。その恐怖から逃れるには、目の前にあるパイプをもう一度炙るしかなかった」(元薬物依存当事者の手記より抜粋)
肉体的には、皮膚の下を無数の虫が這い回るような強烈な幻触・掻痒感(いわゆる蟻走感)に襲われ、皮膚を血が出るまで掻きむしり、傷口を化膿させてしまうケースも多発します。さらに恐ろしいのは、長期間の断薬に成功したと思われた後でも、過度なストレスや睡眠不足などをきっかけに、突然使用時と同様の幻覚や妄想が再燃するフラッシュバック現象です。一度破壊された脳の神経ネットワークは、数か月から数年の時間を経ても完全に元の状態へ戻ることは極めて難しく、生涯にわたる治療とケアが必要となります。