映画『レナードの朝』衝撃の実話!30年の眠りから目覚めたモデルの切ない真相

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映画『レナードの朝』の根底にあるのは、世界を震撼させた実際の医療ドキュメンタリーです。1916年から1927年にかけて世界中で推定500万人以上が感染した「エコノモ嗜眠性脳炎(Encephalitis lethargica)」がすべての発端でした。感染者の約3分の1が急性期に死亡し、生き残った者の多くも、数年から数十年を経て脳幹や基底核が破壊され、意識は保たれたまま身体が彫像のように凍りつく「嗜眠性後パーキンソニズム」を発症したのです。

実在のセイヤー医師である神経科医オリヴァー・サックス(1933〜2015)は、1973年に出版した著書『Awakenings(原題)』の中で、当時の臨床実験を克明に記録しています。映画で描かれたレナード・ロウの実在モデルは、手記の中で「レナード・L(Leonard L.)」と記された実在の男性でした。

サックス医師の著書や臨床記録によると、現実のレナードは1920年生まれ。10代で発症して読書好きの優秀な青年だったものの、20代半ばで完全に身体の自由を失いました。1969年春にL-ドーパの投与を受けて劇的な覚醒を果たした際、映画と同じく周囲を驚愕させる知性と雄弁さを取り戻しました。しかし、映画と現実には決定的な乖離が存在します。

最も大きな創作は、ペネロープ・アン・ミラー演じる女性「ポーラ」との切ないロマンスです。実際には、覚醒したレナードを待っていたのは美しい恋愛劇ではなく、長年彼を過保護に介護し続けてきた実母との激しい精神的葛藤と、30年ぶりに身体性を取り戻したことによる性衝動の暴走でした。サックス医師の手記には、レナードが性的なフラストレーションや攻撃性をあらわにし、看護師や周囲の人間に対して激しいパラノイア(偏執病)的な言動をぶつける生々しい現実が記録されています。

そして最も衝撃的なのは、その後の寿命です。映画では一度眠りに戻った後の動向は象徴的にしか描かれませんが、実在のレナード・Lは1969年の再発後も病院で生き続け、1981年4月、誤嚥性窒息によって61歳でこの世を去りました。覚醒の魔法が解けたあとの12年間、彼は完全に回復することのない身体の牢獄の中で、知性だけを澄み切らせたまま静かに命を削り続けたのです。サックス医師は手記で「彼が自らの崩壊を完全に自覚しながら受け入れていった過程は、悲劇的であると同時に崇高ですらあった」と振り返っています。

木村 陽翔

木村 陽翔

テックライター兼ウェブディレクター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。

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