なぜ名刹に赤煉瓦アーチが?南禅寺水路閣が紡ぐ美と再生のドラマ
なぜ名刹に赤煉瓦アーチが?南禅寺水路閣が紡ぐ美と再生のドラマについて知っておくべき 事実を分かりやすい構成で解説いたします。
この大事業を指揮したのは、工部大学校を卒業したばかりの弱冠21歳の青年技師・田辺朔郎だった。当時のお雇い外国人技師に頼ることなく、日本人だけの手で成し遂げられた琵琶湖疏水事業は、日本の近代土木技術史における決定的な金字塔として名高い。
田辺は測量から設計、過酷を極めたトンネル掘削工事に至るまで現場の先頭に立ち続け、京都の未来を切り拓いた。彼が設計したアーチ橋は全長約93.2メートル、幅約4メートル、高さ約9メートル。美しい曲線を描く脚柱の間からは、計算された借景のように奥の木々や石段が覗く。南禅寺の景観を壊すどころか、新たな視覚的奥行きをもたらす設計意図がそこには確かに存在していた。
現在この水路を管理しているのは京都市上下水道局だ。毎秒数トンの水が今もなお水路閣の上部を滔々と流れ、蹴上浄水場を経て京都市民の暮らしを支え続けている。単なる過去の記念碑ではなく、現在進行形で街の生命線を担っている点がこの建造物の真の凄みと言えるだろう。