海外旅行でおすすめの常備薬まとめ|現地調達の危険性と機内持込ルール
海外旅行でおすすめの常備薬まとめ|現地調達の危険性と機内持込ルールに関する専門家の意見を丁寧に解説いたします。
旅行者の間で信じ込まれている医療知識の中には、医学的見地から見て極めて危険な誤解が紛れ込んでいます。その筆頭が、海外旅行での下痢止めの正しい使い方です。
「移動中のバスでお腹が痛くなったら困るから」と、下痢が始まった直後にロペラミド塩酸塩などの強力な止瀉薬(腸の蠕動運動を止める薬)を服用してしまう人が少なくありません。しかし、東南アジアや南米などで発生する下痢の大半は、細菌(病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなど)やウイルスに汚染された水・食物が原因です。強力な下痢止めで腸の動きを止めてしまうと、本来排出されるべき毒素や病原体が体内に長期間滞留し、高熱や血便を伴う重篤な「細菌性腸炎」へと悪化させる引き金になります。
基本方針は「下痢止めで無理に止めず、整腸剤を服用しながら経口補水液で水分と電解質を補給し、毒素を自然に排出しきる」ことです。止瀉薬は、空港への移動中など「どうしても数時間トイレに行けない非常事態」に限定し、最小限の頓服に留めなければなりません。
さらに見落としがちなのが、各国の海外持ち込み禁止薬一覧に抵触するリスクです。日本国内のドラッグストアで誰でも購入できる総合感冒薬(風邪薬)や鼻炎薬の中には、「プソイドエフェドリン(塩酸プソイドエフェドリン)」や「コデイン(リン酸コデイン)」が含まれている製品が多数存在します。これらの成分は、覚醒剤や麻薬の原料になり得るとして、シンガポール、アラブ首長国連邦(ドバイ)、オーストラリアなどの税関において極めて厳しく監視されています。
善意の旅行者が「単なる日本の風邪薬」として持ち込んだ結果、手荷物検査で没収されるだけでなく、最悪の場合は違法薬物の密輸容疑で身柄を拘束され、長時間の取り調べを受ける事態に発展したケースも報じられています。渡航先の保健当局が指定する規制薬物リストを事前に確認することは、パスポートの確認と同等に不可欠なステップです。