あんたがたどこさ歌詞の意味|船場山のたぬきと戊辰戦争の裏歴史を暴く

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多くの人が「熊本の郷土民謡」として記憶しているこの歌ですが、民俗学者や歴史家の間では長年、言語的な決定的一致の欠如が指摘されてきました。最大の疑問符は、語尾に頻出する接続助詞「〜さ」にあります。肥後弁(熊本方言)において、言葉の語尾に「〜さ」を付ける語法は本来存在せず、当時の熊本地方では「〜ばい」「〜たい」を用いるのが日常語でした。「どこさ」「熊本さ」「せんばさ」という言い回しは、明らかに東日本や東北、あるいは江戸言葉の特徴です。

この言語的矛盾を解き明かす鍵として浮上したのが、1868年の戊辰戦争前後に熊本へ駐屯した新政府軍(薩長軍を中心とする官軍兵士)の存在です。明治維新の混乱期、熊本城一帯には薩摩藩・長州藩をはじめ、関東・北陸出身の兵士たちが警備や遠征のために駐屯していました。城下町の子どもたちを見かけた兵士が「あんたたち、どこの子だい?」と声をかけ、子どもたちが「肥後たい、熊本たい」と答えたやり取りを、他藩の兵士が自らの耳と口調で面白おかしく再現したのが歌の原型ではないかという見立てです。

当時の軍事記録や回顧録を紐解くと、地方へ派遣された兵士たちが現地の風俗や地形を茶化して歌う「陣中俗謡」が数多く記録されています。異郷の地でいつ戦火に巻き込まれるか知れない極限状態に置かれた兵士たちの心理と、言葉の通じにくい地元民との緊迫感を含んだコミュニケーションが、あの独特のリズムに刻み込まれているのです。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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