孤高の歌姫・藤圭子の晩年と真実 娘・宇多田ヒカルへ遺した光と影
今注目を集めている 孤高の歌姫・藤圭子の晩年と真実 娘・宇多田ヒカルへ遺した光と影について、多角的な視点をご紹介しています。
藤圭子にとって、娘・宇多田ヒカルの存在は何物にも代えがたい光だった。夫であった宇多田照實とともに家族でアメリカへと渡り、音楽制作に没頭した日々は、日本での過酷な名声から逃れるための安息地でもあった。幼い娘が見せる並外れた音楽的才能を誰よりも早く見抜き、その感性を誇りに思っていた母の横顔は、ステージ上の冷徹な眼差しとはまったく異なる温もりに満ちていたという。
しかし、娘が瞬く間に世界的スーパースターへと駆け上がっていく姿を見つめるなかで、母と娘の関係には言葉にしがたい複雑な距離が生まれていく。自らの果たせなかった夢の具現化に歓喜しながらも、深まる心の病が母子の対話を阻んでいった。後年、宇多田ヒカルが綴った「彼女はとても長い間、精神の病に苦しめられていました」という告白は、母が抱えていた痛みの深さを雄弁に物語っている。