谷崎潤一郎の禁断世界を映像化した名作『鍵』背徳の結末と配信状況
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西洋と東洋の隔たりを一瞬で無効化してしまうほどの磁力が、谷崎潤一郎の筆致には宿っている。原作小説『鍵』が発表された当時、そのあまりに赤裸々な性愛描写と緻密な心理のせめぎ合いは文壇を震撼させた。これを異国の地、ヴェネツィアの水辺を舞台に翻案したのがティント・ブラスだ。当時のイタリア映画界において、文芸映画としての品格を保ちつつ過激な視覚的快楽を提示する試みは、極めて野心的であり、同時に大きな賭けでもあった。
サン・フランシスコ・フィルムとメドゥーサ・ディストリビューツィオーネのタッグによって具現化された映像世界は、重厚な美術セットと光と影のコントラストが際立つ。原作のエッセンスである「日記による間接的な対話」を映画的リアリズムへ見事に落とし込み、時代背景を第二次世界大戦開戦直前の1940年に設定したことで、個人的な破滅劇と時代の黄昏が見事に共鳴している。