映画『幕が上がる』主題歌の真相|ももクロ「青春賦」と劇中曲を徹底解剖

映画『幕が上がる』主題歌の真相|ももクロ「青春賦」と劇中曲を徹底解剖に関する専門家の意見を丁寧に解説いたします。

本作の音楽を語る上で、現在でもネット上で散見されるいくつかの重大な誤解を是正しておかなければならない。

第一の誤解は、「映画のクライマックスで流れた『走れ!』が主題歌である」という混同だ。前述の比較表で示した通り、「走れ! -Z ver.-」はあくまで物語の推進力を担う劇中歌(挿入歌)であり、公式な主題歌は「青春賦」である。劇中歌「走れ!」が観客の感情を一気に昂らせる起爆剤であるとすれば、主題歌「青春賦」はその熱狂を静かに受け止め、人生の次なるステージへと送り出す着地点の役割を担っていた。この二段構えの音楽構成こそが、観客に深いカタルシスをもたらした本質である。

第二の誤解は、「アイドルを主役に据えた企画ありきの商業タイアップソングに過ぎない」という冷笑的な見立てだ。しかし、この作品で試みられたのは真逆のアプローチであった。平田オリザが提唱する「演劇とは、他者を理解するためのメディアである」という思想に基づき、ももクロのメンバーたちは数ヶ月におよぶ本格的なワークショップを経て、アイドル特有の過剰な演技・発声を徹底的に解体された。

歌唱表現においても同様である。アイドル界特有の作為的な甘い声優的発声や、過剰に力んだシャウトを極力排除し、自然な胸声と混声合唱との調和を目指したディレクションが貫かれた。社会学的な観点から言えば、これは昭和・平成的な「作られたアイドル偶像」から、平成末期から令和へと続く「等身大のパフォーマー」への精神的脱皮であり、青春期の集団的共依存からの自立を告げるドキュメンタリーそのものだったのだ。

【プロの結論】音楽と映画を体験すべき人・慎重になるべき人の明確な判断基準

公開から長い年月が経過した今、映画『幕が上がる』およびその主題歌・サントラに触れるべきかどうか迷っている読者のために、客観的な判断基準を提示する。

【強くおすすめできる人】

  • 高校時代、部活動や文化祭など一つの目標に向かって仲間と全身全霊で打ち込んだ経験がある人
  • ピアノやストリングス、合唱を基調とした叙情的なJ-POPや卒業ソングに目がない人
  • 『桐島、部活やめるってよ』や『スウィングガールズ』のような、リアリズムと緻密な演出に裏打ちされた本格的な青春群像劇を愛する映画ファン

【慎重になるべき人(おすすめできない人)】

  • コールアンドレスポンスや電波系アップテンポといった、初期ももクロの激しいアイドルポップスだけを求めている人
  • 静寂や余白を多用する平田オリザ特有の演劇的演出が苦手で、ハリウッド的な起承転結の派手な展開のみを好む人
中島 亮太

中島 亮太

写真家・フォトエディター

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest