天然痘ウイルスは今どこに?世界2か所保管の真相と再流行の脅威
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天然痘との戦いは、医学史における最大の勝利体験として語り継がれています。その起点となったのは、1796年にイギリスの医師エドワード・ジェンナーが開発した天然痘ワクチン種痘でした。牛痘に感染した乳搾りの女性は天然痘にかからないという農村の伝承に着目したジェンナーは、少年の腕に牛痘の膿を接種する実験を行い、人工的に免疫を獲得させる手法を確立しました。
ジェンナーの発見から約170年後の1958年、ソ連の提唱を受けてWHOは世界的な根絶計画を開始。さらに1967年に強化された「世界天然痘根絶計画」では、画期的な2つのイノベーションが導入されました。一つは熱帯地域でも常温保存できるフリーズドライ(凍結乾燥)ワクチンの普及、もう一つはフォーク状の針先で皮膚を浅く突く「二又針」による簡便・確実な接種法の確立です。
医学界が天然痘の根絶に成功した天然痘根絶の理由には、ウイルスの生物学的特性が深く関係しています。
- 人間のみが唯一の宿主であること:野生動物や昆虫などの「自然宿主(レゼルボア)」が存在せず、人間の間でのみ感染が連鎖するため、人為的な免疫壁を作ればウイルスの逃げ場を完全に塞ぐことができた。
- 不顕性感染が極めて稀であること:感染したほぼ全ての人が特徴的な高熱や皮膚症状を発症するため、感染者の特定と追跡が容易だった。
- 迅速な「封じ込め(リング・バクシネーション)」の成功:感染者が発生した際、その濃厚接触者と周辺住民へ集中的にワクチンを打つ包囲網戦略が功を奏した。
1977年にアフリカ・ソマリアの青年アリ・マオ・マーリン氏が自然界における最後の感染者となり、完全に回復。その後3年間にわたり新規感染がゼロであったことが確認され、1980年5月8日、第33回世界保健総会において正式にWHO根絶宣言の経緯が結実し、人類は宿敵を打ち破ったと世界中に宣言されました。