ミノムシ激減の真相と中身の正体|消えた理由と最強の糸を追う
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長年、果樹農家や庭木愛好家にとってミノムシは、サクラ、カキ、ツバキなどの葉を食い荒らす害虫としての駆除対象でした。特に幼虫が集団で発生すると、枝全体の葉が食い尽くされ、樹勢が著しく衰弱するため、見つけ次第捕殺するか薬剤散布を行うのが園芸界の常識でした。
しかし、近年の材料科学・バイオテクノロジー分野において、ミノムシに対する評価は180度転換しています。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)や民間化学メーカーによる共同研究によって、ミノムシが吐く糸の並外れた物理特性が白日の下に晒されたためです。
測定データによると、オオミノガ幼虫の糸は、これまで「地上最強の天然繊維」と称されてきたクモの糸(オニグモ等の牽引糸)を大幅に上回る破断強度(引張強さ)と初期弾性率を記録しました。蚕(カイコ)の絹糸と比較しても約2.5倍〜3倍の引っ張り強度を持ち、強靭性と柔軟性を高次元で兼ね備えています。
ミノムシは生涯にわたりミノを支え、強風や外敵の衝撃から身を守るため、途切れにくく極めて規則正しい高分子結晶構造を持つタンパク質繊維を吐出します。現在、このミノムシ糸の遺伝子配列解析と人工量産技術の開発が進められており、自動車の軽量化部材、航空宇宙用複合材料、防弾ベスト、さらには生体適合性を生かした医療用人工血管や手術用縫合糸など、幅広いハイテク産業への応用が期待されています。