「苦しまない死に方」は可能か?平穏死の真実と終末期医療の最前線
「苦しまない死に方」は可能か?平穏死の真実と終末期医療の最前線の疑問点について、最新情報を基に徹底解説します。
老衰死を迎える高齢者が「眠るように息を引き取った」と語られる背景には、人体の精巧な防御反応と自然の仕組みが存在する。老衰で苦しまない理由として、医学的には主に以下の生体変化が解明されている。
第一に、食欲の低下に伴う「ケトン体」の上昇と、脳内麻薬と呼ばれる「エンドルフィン」の分泌である。食べられなくなると身体は自然と飢餓状態に適応し、多幸感をもたらす脳内物質が分泌され、苦痛や飢餓感が麻痺していく。点滴を過剰に行わないことで起こる軽度の脱水状態も、意識を穏やかに混濁させ、天然の麻酔薬のような役割を果たす。
終末期の意識低下の経過をたどると、患者はまず日中の傾眠時間が増え、次第に周囲への反応が薄れていく。最期の数日間は深い眠りのような昏睡状態となり、聴覚以外の感覚から順に機能が停止する。家族から見ると呼吸パターンの乱れ(下顎呼吸など)に苦しそうに見える瞬間もあるが、本人の大脳皮質はすでに休止状態に入っており、苦痛や窒息感を自覚していないケースがほとんどである。