清楚派の殻を破った演技派・松たか子、スクリーンで刻んだ「濡れ場」の情念と覚悟の系譜
今注目を集めている 清楚派の殻を破った演技派・松たか子、スクリーンで刻んだ「濡れ場」の情念と覚悟の系譜について、詳しいまとめをご紹介しています。
松たか子という役者のターニングポイントを語る上で、根岸吉太郎監督の『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』(2009年)を外すことはできない。太宰治の短編を原作とした同作で、彼女は放蕩癖のある作家の夫を献身的に支えつつ、自らも愛欲と落魄の渦へと巻き込まれていく主人公・佐知を演じきった。
作中で披露された濡れ場のカットは、単なる官能の描写にとどまらない。過酷な運命を受け入れ、泥濡れになりながらも生を肯定する女性の強かさが、その肌のぬくもりを通して画面全体に伝播する。清楚な「お箱入り娘」という世間の先入観を鮮やかに砕いたこの作品で、彼女はモントリオール世界映画祭最優秀監督賞の栄誉に華を添え、自身も日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた。