石川さゆり『天城越え』歌詞の真意!人を狂わせる情念の深層と秘話
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なぜこれほどまでに狂気じみた名曲が誕生したのか。その背景には、従来の歌謡界の常識を覆そうとした作家陣の凄絶な執念があった。作詞を手がけた吉岡治と作曲の弦哲也は、伊豆の湯ヶ島温泉に籠もり、石川さゆりの新たな代表作を生み出すための制作合宿を敢行した。
当時、石川さゆりは『津軽海峡・冬景色』などの大ヒットを経て、歌い手としての円熟期を迎えつつあった。しかし作家陣が目指したのは、耐え忍び、涙を流して男を待つという従来の演歌におけるステレオタイプな女性像の破壊だった。自分の足で立ち、燃え盛る情念を自ら選び取って破滅へと突き進む、能動的で強い女を描くこと。それこそが吉岡治の狙いだった。
吉岡が紡ぎ出した先鋭的な詞に、弦哲也が三味線の爪弾きを思わせる劇的な旋律を乗せ、桜庭伸幸がダイナミックなオーケストレーションを施した。当時まだ20代後半だった石川は、この劇薬のような世界観を見事にその身に憑依させ、歌謡史に残る怪作を完成させたのである。