『あゝ無情』誕生秘話とアン・ルイスの現在|名曲の真相と引退後のリアル
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ステージの上では誰もが恐れ入るタフなロッククイーンとして君臨していたアン・ルイス。しかしその内面では、過酷な芸能界の荒波によるプレッシャーが確実に心身を削り取っていました。
暗雲が立ち込めたのは1995年頃のことです。ライブツアーの最中や生放送番組の出演前、突然の激しい動悸、過呼吸、強烈な死の恐怖に襲われるようになります。今でこそ広く認知されている「パニック障害」です。当時の日本社会および芸能界においてはメンタルヘルスの知識が極めて乏しく、「気の持ちよう」「単なる体調不良」として軽視されかねない時代でした。
「お客様の前に出ると体が震え、声が出なくなるかもしれない」という恐怖心は、表現者としてのアン・ルイスの喉元を締め上げました。一時的な休養と復帰を試行錯誤しながら戦い続けたものの、病状は簡単に平癒するものではありませんでした。
そして彼女が下した究極の決断が、2013年5月の完全引退表明でした。かつての元夫・桑名正博のトリビュートアルバム参加や節目となる長男・美勇士とのデュエット企画を最後の置き土産に、「マイクを置く」ことを公式に宣言。ファンに惜しまれつつも、一人の人間としての穏やかな余生を取り戻すための、勇気ある撤退でした。