弥勒菩薩とは?56億7千万年の謎と国宝半跏思惟像の真実を追う
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弥勒菩薩の像容として世界的に著名なのが「半跏思惟像(はんかしゆいぞう)」です。台座に腰掛け、右足の先を左足の太ももに乗せ(半跏)、右手の指先を軽く右頬に添えてかすかに頭を傾ける独特の姿勢をとります。
このポーズの意味は、「いかにして過酷な現世に生きる衆生を救済すべきか」という深い思索に沈む姿です。唇の端をわずかに引き上げた表情は「アルカイックスマイル(古典的微笑)」と呼ばれ、古代ギリシャの彫刻にも通底する普遍的な静けさと温かさを湛えています。
日本における弥勒菩薩像の双璧をなすのが、京都・太秦の広隆寺「木造弥勒菩薩半跏像」と、奈良・斑鳩の中宮寺「木造菩薩半跏像」です。
昭和26年(1951年)に文化財保護法に基づく「国宝第1号」に指定された広隆寺の宝冠弥勒は、アカマツの一木造で作られています。アカマツ材は古代の日本彫刻では極めて珍しく、朝鮮半島(新羅)からの渡来仏説と国内制作説の間で長年熱烈な論争が繰り広げられてきました。ドイツの哲学者カール・ヤスパースが「人間の実存の最も清らかな姿を表現したもの」と激賞した逸話はあまりにも有名です。
一方、聖徳太子の母・穴穂部間人皇女の宮跡に建つ中宮寺の半跏思惟像は、クスノキの寄木造で作られており、漆黒の光沢と滑らかな肉体表現が特徴です。エジプトのスフィンクス、ダ・ヴィンチのモナ・リザと並び「世界の三大微笑」の一つと称される気品は、1400年の時を超えて見る者の心を揺さぶり続けます。