鈴虫の鳴き声に隠された意味とは?羽の構造や鳴かない原因をプロが解明

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鈴虫の鳴き声といえば、一定のリズムで奏でられる穏やかな「リーン、リーン」という音色を思い浮かべる方が大半でしょう。しかし、昆虫行動学の研究によると、鈴虫のオスは状況に応じて周波数やテンポ、音量を使い分ける「3つの鳴き分け」を行っています。

第一に、もっとも広く知られているのが「ひとり鳴き(誘引鳴き・縄張り鳴き)」です。これはオスが自分の存在とテリトリーを周囲に知らせ、遠くにいるメスを呼び寄せるための標準的な鳴き声です。「リーン、リーン」と澄んだ音を一定間隔で繰り返すのが特徴で、余計な体力を消耗しない持続可能な発音パターンとなっています。

第二に、メスがオスの至近距離(数センチ〜十数センチ程度)に接近した際に発動する「口説き鳴き(求愛鳴き)」です。メスの触覚がオスの身体に触れたりフェロモンを感知したりすると、オスは普段の落ち着いたリズムを一変させ、「リリリリリ……」「シィー、シィー」といった小刻みで甘い連続音へと移行します。オスは同時に羽を小刻みに震わせながらメスにお尻を向け、背中にある誘引腺から分泌物を舐めさせて交尾体勢へと誘導します。

第三が、オス同士が鉢合わせた際に発生する「争い鳴き(威嚇鳴き)」です。餌場やメスを巡ってライバルと接触した際、触覚を激しく打ち鳴らしながら「キキッ、キキッ」「リッ、リッ」と短く鋭い破裂音を放ち、相手を威嚇・排除しようとします。

なお、メスの鈴虫が鳴かない理由は、羽の構造自体がオスと根本的に異なるためです。メスの前羽には音を奏でるための発音器(ヤスリや摩擦片)が存在せず、外見的にもオスのように幅広なうちわ型ではなく、細くすっきりとした翅脈(しみゃく)をしています。鳴く行為は膨大なエネルギーを消費し、天敵に居場所を知らせるリスクを伴うため、繁殖器官としての卵巣を発達させるメスは鳴く器官を退化させ、オスのみがリスクを背負って音響シグナルを発信するように進化しました。

林 結菜

林 結菜

ライフスタイル編集者

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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