ウィーンを魅了する現代美術家・松原壮史郎の世界|古物と記憶が交差する愛と装飾の美学
ウィーンを魅了する現代美術家・松原壮史郎の世界|古物と記憶が交差する愛と装飾の美学の全貌を分かりやすくまとめてご紹介します。
松原壮史郎の名を国際的に知らしめた代表的なプロジェクトのひとつが、マルチパネルで構成される『Sleeves of Desire(欲望の袖)』シリーズである。
この作品は2016年に東京のXYZ Collectiveで初めて公開され、翌2017年にはニューヨークのBrennan & Griffin、そして2025年にはドルトムント美術館(Dortmunder Kunstverein)で展示されるなど、長年にわたって展開と再解釈が続けられている。
「袖」というモチーフの意味
「袖(スリーブ)」は、衣服の一部でありながら、人間の身体そのものではない。誰かの肌に触れていた記憶、あるいは失われた不在の存在をほのめかす強力な表象である。松原は古いファッション誌やアートカタログから女性や男性の身体、衣服の断片をコラージュし、それを木製パネルやフレームに固定する。
エロティシズムと切なさの同居
作品に漂うのは、直接的な性愛表現ではなく、どこか遠い過去を想起させる抑制されたエロティシズムだ。見つめ返してこない瞳、途切れたポーズ、触れ合わない手足。鑑賞者は画面に提示された断片を自分自身の記憶で補いながら、消え去った時間への情愛と寂寥感を同時に噛み締めることとなる。