「連れ込み宿」秘史:ラブホテル源流と消えゆく昭和レトロ建築の謎
「連れ込み宿」秘史:ラブホテル源流と消えゆく昭和レトロ建築の謎にまつわる興味深い視点を分かりやすく発信ます。
終戦後、焼け野原から立ち上がった日本社会において、庶民の居住空間は極めて過密かつ非プライベートなものだった。家族全員が畳数枚の部屋で身を寄せ合って暮らす時代、男女が二人きりになれる物理的スペースは、都市のどこにも存在しなかったのだ。そこに目をつけたのが、従来の商人宿や下宿屋を改装し、1時間単位で部屋を貸し出すビジネスモデルである。
これが後にラブホテルへと進化する原形となった。初期の営業態様は極めて簡素だった。薄暗い階段、ギシギシと鳴る廊下、和室に敷かれた一組の布団、そして洗面台。フロントを通さずに裏口から出入りできる裏階段の設置など、利用者の目忍びを助ける工夫が随所に凝らされていた。昭和30年代後半には全国で数万軒規模にまで膨れ上がり、都市の路地裏を埋め尽くした。だが、モータリゼーションの到来やキラキラとしたネオン街の誕生とともに、洗練された洋風のレジャーホテルへと急速に置き換わっていく。昭和の街角から静かに消えていったその裏角には、戦後日本が歩んだ目まぐるしい都市化の記憶が今も深く刻まれている。