線が斬り裂く人間の暗部。鬼才・高橋ツトムが描くダークサスペンス
線が斬り裂く人間の暗部。鬼才・高橋ツトムが描くダークサスペンスの要点を丁寧に掘り下げてご紹介します。
1990年代初頭、講談社の『月刊アフタヌーン』で連載が始まった『地雷震』は、当時の青年漫画界に凄まじい衝撃をもたらした。主人公・飯田響也がまとう絶対的なニヒリズムと、新宿の闇を切り取る圧倒的な筆致。感情に流されない冷徹な視線は、従来のハードボイルド作品が持っていた湿っぽさを完全に拒絶していた。
セリフで説明しない。トーンに頼りすぎない。ただ墨の滲みと掠れ、キャラクターの視線の交錯だけで物語を駆動させる。その手法は、ナチス・ドイツの狂気を背景に描いた『NeuN』へと鮮やかに受け継がれていく。過酷な運命に抗う少年たちの息遣いと、圧倒的な悪の気配。ページをめくる指が止まらなくなるあの感覚は、計算し尽くされた沈黙の演出から生まれている。